古今洋歌集

…力をも入れずして天地を動かし、目に見えぬ鬼神をも哀れと思はせ、男女の仲をも和げ、猛き士の心をも慰むるは、それ歌なり。
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ギネスの竪琴


1759年にアーサー・ギネスなる若者が、廃業した醸造所と
なんと9,000年の賃貸契約を結んだという神話を持つギネスビール。
実際は、父親が領民のためにつくってやっていたビール醸造所を
兄から譲り受けた(しかも34歳で)のが真相に近いようだが…。
このグラスや缶についているマーク。これは、竪琴(ハープ)だ。
なにゆえかは、ケルトおよびアイルランド(愛蘭土)の歴史に由来する。

まず、ケルトという語も実に曖昧なのだが、紀元前後の古代ヨーロッパでは、
ギリシア・ローマの地中海世界から見て、北方に住む未開蛮人たちは
十把一絡だったのではないか。そうした観点からすれば、
ケルトは、ゲルマン(現スカンディナビア・ドイツ北部の居住民)とは
明らかに違う文化・世界観・価値観を持っていた、北西に住まう人々というほどか?
「ヨーロッパの古代先住民だ」と一言で済ます手もある。

BBCがエンヤを起用して創ったドキュメンタリー風ドラマ(1986年制作)は、
古ヨーロッパの「オークの森の民」や「魔術や妖精と暮らす民」との浪漫な想像を
かき立てたが、そのイメージだけが増幅されてきた面も否めない。

Celtic Cross
言語系統で分けてインド・ヨーロッパ語族のケルト語派(これにも2種あり、
現存はアイルランド語・カナダ一部で使われるスコティッシュ・ゲール語等の
「ゲール語」種と、ウェールズ語・フランスブルターニュ半島で使われる
ブルトン語等の「ブリテン語」種)を話した人々という定義もあるようだが、
われわれには複雑すぎる。イギリス人考古学者らは、「ケルト」という用語に否定的とも云う。

現在の国(州)名で、「ケルトの子孫」と信じる人々が多いところは、
ガリア(ゴール・ゴロワ)部族およびブルトン部族の子孫たるフランス人、
ベルガエ部族の子孫たるベルギー人、そして、アイルランドとウェールズ。
スコットランドはどうか?ウイスキ・観光の商売では諾とし、内心は否かも知れぬ。
ボルドー(Bordeaux←Burdigaraはケルト由来)のあるアキテーヌ地方も、
青銅器文化のケルトが造ったという伝説があるが、現在は関係が薄い。

ヨソ者がとやかく云うことでなく、いま、その地に住んでいる者らが
過去(歴史)との関わりを自分らのやり方で観ずればよい。
それがアイデンティティなるものではないか?

ま、それはともかく、ようやく本題(笑)。
ローマ帝国やゲルマン人の領土拡大力に脅かされ、大陸の西へ逃れた。
カエサル(シーザー)率いるローマ軍とケルト人が戦ったのは、2千年前だ。

鉄器文化を持つに至ったケルトが、先住アイルランド民(狩猟民と青銅器文化民)を
統合支配しケルト社会をつくったのは、A.D.400年頃。
ドルイド(Druid)なる階層に率いられる家父長大家族制の農耕社会だったらしい。


こうしたケルト社会の形成期にキリスト教が入ってきた(最も有名な聖パトリック
入愛は432年頃)ためか、古ケルトの宗教が一神教的な性格が薄かったためか、
宗教衝突・戦争がなく、ケルト的キリスト教として学問・美術・文芸に浸透した。
これは、日本の仏教受容と、飛鳥・天平期の文化隆盛と一脈通じるものがあるようだ。
(本筋からずれるが、この聖パトリックという人の生涯は興味深い)

この5〜6世紀は、かのアーサー王(アーサー・ペンドラゴン)伝説の時代で、
後見人の魔術師マーリンは卓越したハープ弾き、アーサー王が傷を癒した
常若の島アヴァロンでは皆ハープを学ぶ、と描いた書もあるようだ。

800年頃になると、4人のリーダー(王)が愛蘭土を分治するが、
やっかいなヴァイキング(Norsemen)の襲撃略奪も始まり、ダブリンに居着かれてしまう。
挙国一致で敵から故郷を守るというほどには、国家統一がなされてなかったし、
このあたりは、フビライ・ハン軍の元冦を切り抜けた日本と違うところだ。


さて、そこに現れたは愛蘭土の英雄、偉大な王様のブライアン・ボル(Braian Boru)
ヴァイキングを追い出すキッカケとなる全土の政治統一は、1002年のことだった。
この偉大な王の名をつけたハープ(Brian Boru Harp)は、愛蘭土の国宝級品ならぬ
「国の象徴」であって、国章コイン・パスポートまでに付与されるイコンだ。
ダブリンのトリニティカレッジ図書館に永久保存されている。
先年の名古屋万博の折には、複製だがアイルランド館内に陳列された。

これが、なかなか因縁あるハープで…

この竪琴、高さ86cm、膝の上や台に載せて使うタイプで、そんなに大型ではない。
躯体は柳製、弦は真鍮だから現在のガット弦と異なり、
チェンバロにもやや似た硬質の音かもしれない。

1400年代中期に製作されたものに、何故、昔の王様の名を冠したのか?

Brian boru Harp(本物)picture from Zwoje the scrolls NOTES OF A HARPIST(I)
王の持ち物だったというのは単なる伝説だろうが、王がヴァイキングとの戦いの
最中に側近の楽者が奏でるハープの音色に疲れを癒したというのは想像に難くない。
旧約聖書サムエル記には、後に王となるダビデが牧童のころ竪琴の名手として
見い出され、サウル王の悪霊を竪琴の音により払ったと書かれている(第16章)。
このような背景から、愛蘭土で最古製作の部類に入る竪琴に、昔日の王名をつけたのか。

また一説に、竪琴は抵抗のシンボルとも云う。
愛蘭土では古くからシャナヒ(Shanachi)と呼ばれるゲール語の語り部
がおり、竪琴を奏でつつ、ケルト伝統の文化や歴史や(たまに妖精話)を継いできた。
ところが、ボル王の死後(1014年)、再び国乱れ、ブリテン島から
アングロ・ノルマン貴族たちが陣地取りに来る、さらに、これが呼び水となり
総大将のヘンリー2世王軍も攻めてくる。

この混乱のなか、竪琴を手にした語り部たちは、攻める側にはジャマな存在だから、
「語り部を辞さずば、きさま命はないぞよ」と脅かされる。
そこで、ハープはケルト民たちの密かな抵抗のシンボルとなった訳で、
外敵に抵抗し故郷を守ったボル王と、密接に結びついたという話だ。

それだけで終わらない。
このボル竪琴、故郷を離れ、お宝として長い間ローマ法皇のもとにあった。
17世紀に入り、イギリスでクロムウェルが引き起こした内乱状態が終わり、
チャールズ2世が亡命先のフランスから帰って(1660年)即位すると、
件のハープはイギリス王にプレゼントされ、そしてアイルランドへ戻った。
が、その後も所有者は二転三転。トリニティカレッジに寄贈されたのは、
やっと1760年だった。やれやれ。

が、もひとつ、最後の災難があった。
この竪琴、トリニティカレッジの図書館から盗まれ、金を要求されたことがあった。
大学は断固として支払を拒否した。数カ月後、ある老教授が偶然にも某所で
不自然に積まれた砂山をば見つけ、試しに掘ったところ、
そこに、お国の象徴を発見したのだった。

外国の歴史モノは、書くと肩が凝る(笑)。
井の頭公園の茶店に、ギネスの半パイントを飲みに出よう。

【今日のつけ足し】
◆日本人には「ギネスの竪琴」より「ビルマの竪琴」のほうが馴染み深いが、
 今日版「ビルマの竪琴」とも云える奇譚が、押上の某寺を舞台にあった。

こんな話だ。
 
 東海道四谷怪談を書いた鶴屋南北の墓がある春慶寺で、ある檀家の老婆が
 主人の遺品として持ち込んだ古いビルマ製竪琴(サウン・ガウ)を寺で預かる
 ことになった。数カ月後、住職は、都内の料理店で会食した際、フロア担当だった
 ビルマ(軍事政権名ミャンマ)女性とたまたま知り合い世間話をした。
 件の竪琴の話をしたところ、千葉大学にビルマから留学生が来ており竪琴が弾けると。
 そこで、寺の名と地図を書き渡すと、数日後、ホントウに学生が寺に来た。

 さっそく楽器を見せると「これは古く弦も切れていて、残念ながら私には直せません」
 「すみません」と丁寧に云う。せっかくだから「お国の話でも」と聞いてみると、
 学生の父親が理事をしている孤児院がヤンゴンからクルマで6時間の距離にあるが、
 米や物資・援助金が滞っていて、大変に困っていると。

 そこで、住職は、一肌ぬぐことに…。続きは、こちら
 
◆エンヤの兄姉・叔父のグループクラナド(Clannad)の1978年傑作盤
 この頃の音は良かった。そう云えば姉モレアは、竪琴弾きだ。
 ちなみにCrann Ullは、リンゴの樹という意味らしい。
Crann Ull

◆司馬遼太郎 街道をゆく「愛蘭土紀行 1」 
 ケルト人に関し、ギリシアの歴史家ディオドロスの文を引いた「ケルト人」
(ゲルハルト・ヘルム著・関楠生訳/河出書房新社)を孫引きしているので、
 ここで、曾孫引き(笑)を。

 彼らを見ると恐怖に駆られた。…背が高く、白い肌の下に筋肉が盛り上がっている。
 頭髪はブロンドだが、それは生まれつきばかりではない。彼らは人工的に脱色まで
 するのだ。


 そうか!チャパツの元祖はケルトにあったか。これは発見だ(笑)。

◆ケルティック・ハープの大御所は、「ブレトンの魂」アラン(Alan Stivel)と、元インクレディブル・ストリングス・バンドのロビン(Robin Williamson)
◆ Shanachiとは、われら音楽好きには、トラッドやレゲエを頻発するレコード会社
 として名を馳せているが、同名の日本人女性ケルト音楽グループもあるのだそうな。
 余計なコトだが、竪琴弾きがいないのは解せぬ。

◆ MSのゲームなのだが、、
 ここにあるケルトおよび他文明の解説がなかなか良い⇒ エイジ・オブ・エンペラーズ2
 ↑こんなもの子供だまし(笑)という方は、どうぞ、こちらへ。


◆ ブライアン・ボルという愛蘭土のG1馬もいる。
 世界最古のクラシックと云われる英国G1セントレジャで、2003年9月に優勝した。
 香港だと、ずばり「愛爾蘭王」だ。
 

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